2023/1/27
2023/06/13
中小企業経営強化税制A類型とB類型の違いについて解説
中小企業経営強化税制とは、中小企業の設備投資による企業力の強化や生産性向上を後押しする制度です。
この制度は、平成29年度税制改正に伴い創設されました。
導入する設備の目的によって、A類型、B類型、C類型、D類型の4つに分類され、それぞれ要件や手続きが異なります。
今回は、中小企業経営強化税制の4つの類型のうち、申請者が多いA類型とB類型の違いについて解説していきます。
目次
A類型:生産性向上設備
A類型は生産性の向上を目的とした設備の導入が求められます。
具体的な要件と対象設備は以下の通りです。
要件
① 一定の期間内に販売されたモデルを導入する
(最新である必要はありません)
② 経営力を向上させる設備を導入する
(旧モデルと比較して、生産効率、エネルギー効率、精度などが年平均1%以上向上している設備)
対象設備
A類型の対象設備は以下のものが該当します。
設備の種類 | 用途又は細目 | 最低価格(1台) | 販売開始時期 |
機械装置 | 全て | 160万円以上 | 10年以内 |
工具 | 測定工具及び検査工具 | 30万円以上 | 5年以内 |
器具備品 | 全て | 30万円以上 | 6年以内 |
建物附属設備 | 全て | 60万円以上 | 14年以内 |
ソフトウェア | 設備の稼働状況等に係る情報収集機能を
有するもの |
70万円以上 | 5年以内 |
制度適用までの手順
STEP1.工業会から証明書の発行
導入する設備について、「生産性向上設備の要件」を満たしていることを設備を購入したメーカー等を通じて、工業会等から証明書の発行を依頼し取得します。
STEP2.経営力向上計画の申請
自社の事業を所管する省庁に、経営力向上計画の申請をします。
※経営力向上計画の申請(受理)から認定されるまでの期間は約30日
関連記事▸経営力向上計画とは?
STEP3.設備を取得
設備を取得し、事業に使用します。
STEP4.税務申告
納税書類に工業会からの証明書、計画申請書及び計画認定書(いずれも写し)を添付し税務申告します。
B類型:収益力強化設備
B類型は収益力の強化を目的とした設備の導入が求められます。
具体的な要件と対象設備は以下の通りです。
要件
経済産業省の認定
(年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる設備であることが必要です。
投資計画案を申請し、経済産業局の確認を受け、認定となる確認書を取得します。)
対象設備
B類型の対象設備は以下のものが該当します。
設備の種類 | 用途又は細目 | 最低価格(1台) |
機械装置 | 全て | 160万円以上 |
工具 | 全て | 30万円以上 |
器具備品 | 全て | 30万円以上 |
建物附属設備 | 全て | 60万円以上 |
ソフトウェア | 全て | 70万円以上 |
制度適用までの手順
STEP1.事前確認
まずは、導入する設備の投資計画案を作成し、税理士または公認会計士による計画の事前確認を受ける必要があります。
STEP2.経済産業局による認定
投資計画と事前確認書を本社所在地を管轄する経済産業局へ申請し、投資利益率に関する確認書を取得します。
※確認書の申請(受理)から取得まで約30日
STEP3.経営力向上計画の申請
経済産業局の確認を受けた設備を、自社の事業を所管する省庁に経営力向上計画の申請を行います。
※経営力向上計画の申請(受理)から認定されるまでの期間は約30日
関連記事▸経営力向上計画とは?
STEP4.設備を取得
設備を取得し、事業に使用します。
STEP5.税務申告
納税書類に、計画申請書及び計画認定書(いずれも写し)を添付し税務申告を行います。
STEP6.実施状況報告
計画認定後、投資計画に関する実施状況報告を決められた期間提出する必要があります。
中小企業経営強化税制の対象者
中小企業経営強化税制の対象者は中小企業者等である必要があります。
【中小企業者等】
- 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
- 資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
- 協同組合等
中小企業経営強化税制の税制措置
中小企業経営強化税制の税制優遇制度として、即時償却または税額控除のいずれかを選択適用することができます。
即時償却
設備投資を行ったその年に「すべて」経費として計上することができる
税額控除
設備費用にかかる税額が控除されます。控除される税率は、企業の資本金によって異なります。
- 資本金3,000万円未満:10%税額控除
- 資本金3,000円以上1億円未満:7%税額控除
上記のいずれかを選んで適用することにより、中小企業は金銭的な負担を減らしつつ設備投資ができます。
利用できる期間
令和7年3月31日までの期間となっています。
まとめ
以上、A類型とB類型の違いについて解説させていただきました。
A類型、B類型ともに受けられる税制措置は同じですが、作業時間と適用が受けられるまでの期間に違いがあります。
B類型は経済産業局の確認等が必要になるため、A類型に比べ作業量・作業時間ともに長くなります。
書類等に不備があると、思った以上に時間がかかってしまう可能性もあります。中小企業経営強化税制の適用を受けようとお考えの事業者は、余裕を持ったスケジュール管理をしていきましょう。