2021/10/18

2023/05/12

ものづくり補助金の加点項目を解説!

この記事の監修

NS&パートナーズ会計事務所代表税理士 鈴木良洋税理士/宅地建物取引士/経営革新等支援機関(財務局・経済産業局認定)

東京都中央区八重洲にてNS&パートナーズ会計事務所を開業。
創業・独立の支援、税務・会計・決算に関する業務、税務申告書への書面添付、
自計化システム導入支援などに従事。

 

ものづくり補助金とは、正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。 

中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。

 ものづくり補助金の過去の採択率は、40~60%前後で推移しています。

今回は、そんなものづくり補助金の採択の可能性を上げることができる「加点項目」について解説します。

 

目次

ものづくり補助金の加点項目とは?

 

ものづくり補助金の加点項目とは、決められた基準をクリアすると、採択を決める審査時に加点を受けられる制度のことです。

この加点項目は任意となり、加点を望むのであれば必要書類を用意し、申請時に添付します。

下記のグラフは、ものづくり補助金における、加点項目の数と採択率の関係性を表したデータです。

出典:ものづくり補助金総合サイト

このグラフでは、加点項目が多ければ多いほど、採択率が高くなるのが見て取れます。

 ものづくり補助金は1点、2点で合否が分かれる可能性もあるので、採択率を高めるためには、加点項目の積み重ねが重要になります。

取組みできそうな加点項目があれば必ず適用しましょう。

 

 

ものづくり補助金の加点項目一覧

 

ものづくり補助金は、現在5種類の加点項目があります。

1.成長性加点

2.政策加点

3.災害等加点

4.賃上げ加点等

5.ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組み加点

 

それぞれの加点項目について、詳細を解説していきます。

 

ーーー1.成長性加点ーーー

 

加点項目1:有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者

経営革新計画とは、チャレンジしたい事業を計画書に起こし、「経営革新計画」として、都道府県知事等の承認を得る制度です。

経営革新計画の認定を受けると、ものづくり補助金の加点だけではなく、融資を受ける場合などにも優遇措置を受けることができます。

小規模事業者や中小企業者はぜひとも認定を受けておきたい制度です。

 

ーーー2.政策加点ーーー

 

加点項目2ー1:創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)

創業や第二創業から5年以内の事業者は、加点を受けることができます。

法人は履歴事項全部証明書、個人事業主は開業届を提出します。

 

加点項目2-2:パートナーシップ構築宣言を行っている事業者

パートナーシップ構築宣言とは、取引先と良好な関係を築くために、企業が発注者の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みです。取引先とのパートナーシップを強化し、両社の成長と分配の好循環を目指します。

パートナーシップ構築宣言ポータルサイトで必要項目の入力と作成したパートナーシップ構築宣言の書類を登録すれば完了です。登録した日から承認されるまで約3〜4日後となっています。

 

加点項目2-3:再生事業者

再生事業者とは、中小企業再生支援協議会等から支援を受け、応募申請時において以下のいずれかに該当していることです。

  • 再生計画等を「策定中」の者
  • 再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内(令和2年4月20日以降)に再生計画等が成立等した者

上記に該当していれば、加点を受けることができます。

 

加点項目2-4:デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況

デジタル枠に申請する事業者のみが受けられる加点項目です。

デジタル技術等の活用の方向性や戦略等をHPに提示することや、DX推進指標、サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用など、全部で5段階あります。

A.経営の方向性及びデジタル技術等の活用の方向性の決定 

 a.デジタル技術が社会や自社の競争環境にどのような影響を及ぼすかについて認識、そ の内容について公表する。

 b.上記a.を踏まえた経営ビジョンやビジネスモデルを策定・公表する。

 

B.上記A.の経営ビジョンやビジネスモデルを実現するための戦略を公表する。  

 

C.上記B.の戦略を推進するための体制・組織(CIO(最高情報責任者)、CISO(最35 審査項目・加点項目高セキュリティ責任者)の配置、担当部門の配置等)を公表する。

 

D.「DX推進指標」自己診断フォーマットの定量指標における「人材欄」(688~ 690 行目/Ver.2.3 以降の場合はシート「IT システム構築の取組状況(定量指標)」の 11~13 行目)を全て記載 

 

E. 申請時点において、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を利用しているか。

 

サイバーセキュリティお助け隊とは、相談窓口、システムの異常の監視、緊急時の対応支援、簡易サイバー保険など中小企業のサイバーセキュリティ対策に不可欠な各種サービスを安価で提供してくれるサービスです。

サプライチェーンを狙うサイバー攻撃の高まりにより、中小企業のサイバーセキュリティ対策強化が求められています。

 

加点項目2-5:令和4年度に健康経営優良法人に認定された事業者

健康経営優良法人とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、とくに優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を表彰する制度です。

こちらは過去に認定されている必要がありますので、加点を受けるために新規で取得することはできません。

 

加点項目2-6:技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者

技術情報管理認証制度とは、国が政策した基準に基づき、重要な情報を適切に管理できている企業を認証する制度です。認証を取得している事業者は加点対象となります。

 

加点項目2-7: J-Startup、J-Startup 地域版に認定された事業者 

J-Startupとは、グローバルに活躍するスタートアップ企業のサポートをメインとしています。経済産業省によって2018年6月に立ち上げられました。実績あるベンチャーキャピタリストや大企業の新事業担当者等の外部有識者からの推薦に基づき、潜在力のある企業を選定し、政府機関と民間の「J-Startup Supporters」が集中支援を行うプログラムです。

 

加点項目2-8:「新規輸出 1 万者支援プログラム」に登録した事業者(グローバル市場開拓枠のう ち、②海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ)

こちらは、グローバル市場開拓枠に申請する事業者のみが受けられる加点項目です。

新規輸出1万者支援プログラムという経済産業省の施策へ登録している場合、加点対象となります。

 

加点項目2-9:取引先の事業者がグリーンに係るパートナーシップ構築宣言をしている事業者(グリ ーン枠のみ)

こちらは、グリーン枠に申請する事業者のみが受けられる加点項目です。

取引先もグリーンに関わるパートナーシップ構築宣言を行っていれば、加点対象となります。

 

ーーー3.災害加点ーーー

 

加点項目3:有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者

 事業継続力強化計画とは、中小企業・小規模事業者が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を、経済産業省が「事業継続力強化計画」として認定することです。

事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業・小規模事業者は、ものづくり補助金の加点以外にも税制措置や金融支援などが受けられます。

 

―――4.賃上げ加点等ーーー

 

加点項目4-1:事業計画期間における給与支給総額と事業場内最低賃金をそれぞれ以下(ア)もしくは(イ)の通りとする計画を有し、事務局に誓約書を提出している事業者に対して加点を行う

出典:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金の申請要件である、給与支給総額を年率平均1.5%の増加、地域別最低賃金+30円にするだけでなく、さらに賃上げを計画する事業者は加点対象となります。

 

加点項目4-2:被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

「被用者保険の任意適用」とは、従業員51名〜500名以下の企業において、短時間労働者に対して、厚生年金保険・健康保険を適用するというものです。

加点を受ける場合は特定適用事業所該当通知書を添付することで加点が受けられます。

 

加点項目5:ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組み加点

 

子育て支援・女性活躍推進企業に対して、加点が受けられるようになりました。

詳細は下記のとおりです。

 

5ー1:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく「えるぼし認定」を受けている事業者、もしくは従業員100 人以下の事業者で「女性の活躍推進 企業データベース」に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している事業者

※厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース

 

5ー2:次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「くるみん認定」を受けている事業者、もしくは従業員100 人以下の事業者で「両立支援のひろば」に次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している事業者 

※厚生労働省「両立支援のひろば」 

 


 

通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、グローバル市場開拓(海外市場開拓類型を除く)は、

 最大6項目の加点が可能です。 

 

デジタル枠は、最大6項目の加点に加え、

 デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況にある6項目を加えた計12項目の加点が可能です。

 

グリーン枠は、最大6項目の加点に加え、

 取引先の事業者がグリーンに係る取組を宣言している事業者の計7項目の加点が可能です。

 

グローバル市場開拓枠(海外市場開拓類型)は、最大6項目の加点に加え

 「新規輸出 1 万者支援プログラム」に登録した事業者の計7項目の加点が可能です。

 

 

ものづくり補助金の加点項目における提出書類

 

ものづくり補助金で加点を希望する場合は、各資料の提出・登録や認定の取得を行う必要があります。

 

1.成長性加点 1.経営革新計画承認書の提出
2.政策加点 2-1.履歴事項全部証明書または開業届の提出

2-2.パートナーシップ構築宣言の登録

2-3.再生事業者に関わる確認書の提出

2-4.デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況

    A~C:ホームページのURLと掲載場所を提示

    D:DX推進指標の「人材欄」を全て記載 

    E:サイバーセキュリティお助け隊の契約書の写しの提出

2-5.健康経営優良法人の認定

2-6.技術情報管理認証制度の認証

2-7.J-Startup、J-Startup 地域版に認定

2-8.新規輸出 1 万者支援プログラムの登録

2-9.取引先のパートナーシップ構築宣言の登録

3.災害等加点 3.事業継続力強化計画、または連携事業継続力強化計画の提出
4.賃上げ加点 4-1.従業員への賃金引上げ計画の誓約書の提出

4-2.特定適用事業所該当通知書の提出

5.ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組み加点 5-1.5-2.

くるみん認定またはえるぼし認定を取得しており、次世代法または女活法の一般事業主行動計画を策定し、専用サイトで公表

 

ものづくり補助金の加点項目の申請方法

 

STEP1

電子申請画面の「A.申請の入力」の「その他加点項目」にて、該当する加点項目にチェックを入れていきます。

 

STEP2

電子申請画面の「B.提出書類添付」の「2.審査における加点を希望する場合に必要な追加書類について」にて、加点項目における各資料を添付していきます。

申請内容に応じて、添付が必要となる資料には「必須」マークが表示されており、資料が登録できるようになっています。

登録する資料は、事前にPDFファイルにしておき、ファイル名は公募要領P.32を参考に設定しておきましょう。

 

ものづくり補助金の基本の審査項目

 

基本の審査項目とは、最低限おさえておくべきポイントになります。

任意である加点項目とは別に、基本の審査項目を満たしていないと、そもそも審査には通りませんので、再度確認しておきましょう。

 

補助対象事業としての適格性

  • 給与支給総額の年率平均を1.5%以上増加させること
  • 事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準にすること
  • 事業者全体の付加価値額の年率平均3%以上増加させること

 

技術面

  • 製品やサービスの開発が革新的であるか
  • 課題や目標が明確であるか
  • 課題の解決方法の優位性があるか
  • 技術的能力

 

事業化面

  • 事業実施体制は具体的であるか
  • 市場ニーズの有無はあるか
  • 企業の収益性・生産性は向上するか
  • 事業化までのスケジュールの妥当性はあるか

 

政策面

  • 地域経済への波及効果はあるか
  • 国の政策に合致しているか
  • イノベーション性はあるか
  • ニッチトップとなる潜在性はあるか
  • ウィズコロナ・ポストコロナに向けた経済構造の転換であるか
  • 有効な投資内容であるか

 

ものづくり補助金の減点項目について

 

ものづくり補助金には、加点項目だけでなく、減点項目もあります。

以下の場合は、減点されますので注意が必要です。

 ① 過去3年間に、類似の補助金の交付決定を1回受けている場合、減点になります。

 (過去3年間に、既に2回以上交付決定を受けた事業者は申請対象外です。)

 ② 回復型賃上げ・雇用拡大枠において、繰越欠損金によって課税所得が控除されることで申請要件を満たしている場合は減点となります。

 

【まとめ】ものづくり補助金の加点項目

ものづくり補助金の申請において、基本の審査項目を押さえた事業計画を作ることは大前提ですが、採択率を上げるためにも、加点項目にも注目してみましょう。加点項目は申請内容に関係なく、提出すれば加点されるものになります。ひとつでも多く活用し、1点でも2点でも点数を上げることが重要となります。

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