2022/10/7
2024/05/02
事業再構築補助金とは?申請枠や対象者をわかりやすく解説
事業再構築補助金は、新しい事業展開を検討する中小・中堅企業向けの補助制度として注目されている補助金のひとつです。
2024年4月23日に発表された第12回公募では、既存の事業類型を見直し、今もコロナの影響を受ける事業者への支援およびポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援を重点的に行われます。
当記事では、事業再構築補助金の申請枠や対象者、事前準備などを解説していきます。
目次
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、新たな分野への展開、業種や事業の転換、事業再編など、思い切った事業再構築にチャレンジする中小企業を支援する補助金制度です。
中小企業を対象に事業再構築を支援し、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化への対応、日本経済の構造転換を促すことを目的に2021年から始まりました。
事業再構築補助金の申請対象者
事業再構築補助金の申請対象者は、中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合等です。
【中小企業の範囲】
資本金又は従業員数が下表の数字以下であれば対象となります。
業種 | 資本金 | 従業員数(常勤) |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
【中堅企業の範囲】
中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金10億円未満の会社
事業再構築補助金の補助額、補助率
従業員規模に応じ、補助上限額が設定されています。
成長分野進出枠(通常類型)
項目 | 要件 |
概要 | ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援 |
補助金額 | 【従業員数 20人以下】 100万円 ~ 1,500万円(2,000万円)
【従業員数 21~50人】 100万円 ~ 3,000万円(4,000万円) 【従業員数 51~100人】 100万円 ~ 4,000万円(5,000万円) 【従業員数 101人以上】 100万円 ~ 6,000万円(7,000万円) |
補助率 | 中小企業者等 1/2 (2/3)
中堅企業等 1/3 (1/2) |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~12か月以内
(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から14か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、 広告宣伝・販売促進費、研修費、廃業費(市場縮小要件を満たして申請する場合のみ) |
※()内は短期で大規模な賃上げを行う場合:事業終了時点で①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること
※廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ
成長分野進出枠(GX進出類型)
項目 | 要件 |
概要 | ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援 |
補助金額 | 中小企業者等
【従業員数 20人以下】 100万円 ~ 3,000万円(4,000万円) 【従業員数 21~50人】 100万円 ~ 5,000万円(6,000万円) 【従業員数 51~100人】 100万円 ~ 7,000万円(8,000万円) 【従業員数 51~100人】 100万円 ~ 8,000万円 (1億円) 中堅企業者等 100万円 ~ 1 億円(1.5億円) |
補助率 | 中小企業者等 1/2 (2/3)
中堅企業等 1/3 (1/2) |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~14か月以内
(ただし、補助金交付候補者の採択発表日からか16月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、 広告宣伝・販売促進費、研修費 |
※()内は短期で大規模な賃上げを行う場合:事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること
コロナ回復加速化枠(通常類型)
項目 | 要件 |
概要 | 今なおコロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援 |
補助金額 | 【従業員数 5人以下】 100万円 ~ 1,000円
【従業員数 6~20人】 100万円 ~ 1,500万円 【従業員数 21~50人】 100万円 ~ 2,000万円 【従業員数 51人以上】 100万円 ~ 3,000万円 |
補助率 | 中小企業者等 2/3
中堅企業等 1/2 |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~12 か月以内(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から 14 か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、 広告宣伝・販売促進費、研修費 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
項目 | 要件 |
概要 | コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援 |
補助金額 | 【従業員数 5人以下】100万円~500万円
【従業員数 6~20 人】100万円~1,000万円 【従業員数 21人以上】100万円~1,500万円 |
補助率 | 中小企業者等 3/4(2/3)
中堅企業等 2/3(1/2) |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~12 か月以内
(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から14 か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門 家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、 広告宣伝・販売促進費、研修費 |
※補助率()内はコロナ借換要件を満たさない場合
サプライチェーン強靭化枠
項目 | 要件 |
概要 | ポストコロナの経済社会において、海外で製造等する製品の国内回帰や地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品の生産により、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う中小企業等に対する支援 |
補助金額 | 1,000 万円 ~ 5億円以内
※建物費がない場合は3億円以内 |
補助率 | 中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3 |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~28か月以内
(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から30か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費 |
事業再構築補助金の申請要件
事業再構築補助金に応募申請するためには、以下2つの必須要件をクリアする必要があります。
事業再構築指針に沿った事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けること
事業再構築補助金では、以下6つのいずれかの再構築要件に該当する必要があります。
①新市場進出 ②事業転換 ③業種転換 ④事業再編 ⑤国内回帰
⑥地域サプライチェーン維持・強靭化 |
また申請において、認定経営革新等支援機関から事業計画書の確認を受けることが必須要件となっています。
認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)のことです。
付加価値額を向上させること
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加させることが必要です。
◎上記の必須要件に加え、それぞれの申請枠に応じて追加で要件を満たす必要があります。
事業再構築補助金の補助対象経費
事業再構築補助金の対象経費は以下のとおりです。
対象経費 | 内容 |
建物費 | 建物の建設・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復等
※新築に関しては、補助事業の実施に必要不可欠であること、代替手段が存在しない場合に限り認められ、「新築の必要性に関する説明書」を提出する必要があります。 |
機械装置・
システム構築費 |
機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、専用ソフトウェア・情報システム等の購入 |
技術導入費 | 本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費 |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
※応募申請時の事業計画の作成に要する経費は補助対象外。 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 |
外注費 | 本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
広告宣伝・販売促進費 | 本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費 |
研修費 | 本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費 |
廃業費 | 廃業手続費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用 |
事業再構築補助金のスケジュール
第12回の公募スケジュールは以下のとおりです。
- 公募開始:令和6年4月23日(火)
- 応募締切:令和6年7月26日(金)18:00
- 採択発表:令和6年10月下旬~11月上旬頃(予定)
事業再構築補助金の申請に向けた事前準備
事業再構築補助金の申請に必要な準備を終えるには、最低でも1ヵ月かかるといわれています。
ここでは、余裕を持って不備なく申請を行うために、前もって行っておいたほうがよい事前準備を、大きく分けて4つ解説していきます。
事前準備その1:申請要件の確認
事業再構築補助金の公募要領には、申請要件や対象者、スケジュールなど、申請にあたり必要な情報が書かれています。まずは、公募要領をしっかりと読み込み、事業再構築補助金の申請要件を確認し、概要を理解することが重要です。
事前準備その2:電子申請の準備
事業再構築補助金の申請は、すべて電子申請システムで行います。
電子申請を行うためには、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。
GビズIDとは、1つのID・パスワードでさまざまな行政サービスにログインできるサービスです。GビズIDプライムアカウントの取得は、申請してから発行までに一週間程度時間を要しますので、なるべく早めに取得手続きをしておきましょう。
事前準備その3:事業計画策定の準備
申請には事業計画書が必須となり、採択されるためにはしっかりとした事業計画書を作成する必要があります。
審査項目に沿った計画内容を、A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)で作成します。
事業再構築補助金では、事業再構築指針との整合性と、認定支援機関が認めた事業計画であることが必要となります。
事前準備その4:必要書類の準備
事業再構築補助金では、「事業計画書」の他にも、決算書や確定申告書などの財務状況を把握できる書類も提出します。
【必要書類】
- 事業計画書
- 金融機関・認定支援機関による確認書
- 直近2年間の決算書
- 事業財務情報
- 収益事業を行っていることを説明する書類
- 従業員数を示す書類
- 固定資産台帳
その他、申請枠によって追加書類・加点書類があります。
まとめ
事業再構築補助金第12回公募では、「今なおコロナの影響を受ける事業者への支援およびポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援」に重点が置かれています。
補助金額も高く、新たな事業へチャレンジしていく事業者様にとって、心強い国の支援制度です。
しかし、補助金額が高いがゆえに、必要書類の準備や申請手続きは簡単なものではありませんので、申請をご検討の事業者様は、スケジュールに余裕を持った申請を行っていきましょう。
自社で準備するのが難しい場合は、補助金の申請サポートを利用することをおすすめいたします。