2022/11/11
2023/03/03
事業再構築補助金の採択事例と採択されやすくなるポイントを解説
目次
事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金とは、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するための、企業の思い切った事業再構築を支援してくれる補助金です。
補助上限額は1億円と大規模な補助金制度であり、現在、第8回公募が開始されています。
今回は、これから応募する方や再応募を検討している方へ、採択されやすくなるためのポイントを解説していきたいと思います。
・補助金の申請をしたいけれど、手続きや対象になるのかわからない
・そもそも事業再構築補助金が受けられるか相談したい
・事業再構築補助金以外にも申請できる補助金があるか知りたい
そんなお悩みをお持ちの方は一度NS&パートナーズ会計事務所へご相談ください!
事業再構築補助金に採択されやすくするためのポイント
事業再構築補助金は、申請をすれば、必ずしも全員が採択されるわけではありません。事業再構築補助金の審査は、加点式となっており、合格基準を超えた事業者だけが採択されます。
それでは、より採択されやすくするためにはどうしたら良いか、ポイントをご紹介していきます。
① 事業再構築補助金の目的を理解する
まずは、事業再構築補助金の「目的・趣旨」を理解することが重要です。
補助金によって、目的・対象・仕組みが異なります。
計画している事業が、事業再構築補助金の目的から外れていたり、記載漏れがあっては不採択となってしまいます。大切なのは、「補助金のための事業計画」ではなく、事業再構築補助金の目的に沿った「ウィズコロナ・ポストコロナ時代の環境変化を新たなビジネスチャンスととらえた事業計画」を策定することです。
公募要領には、対象者やスケジュール、審査項目など、申請に必要な情報がすべて記載されています。まずは、公募要領をしっかりと読み込み、理解することが重要です。
公募要領は文字ばかりなので、読むのに苦労する、、、という方には簡潔にまとめた事業再構築補助金の概要や動画がおすすめです。
② 誰が見てもわかる事業計画書
審査員は多くの事業計画書に目を通すため、審査時間が限られています。また、すべての業界や業種について細かく知識を持っているわけではありません。業界でのみ使われている専門用語を補足説明なしで、ずらずらと書かれていても、理解できない可能性が非常に高いです。
事業計画書を書く際は、内容根拠を示すデータや表を用意し、専門用語はなるべく使わず、誰が見てもわかりやすい事業計画書を作成するよう心掛けましょう。

③ 実現性の高い事業計画を作成する
事業を実行できる技術やノウハウなどの記載が無く、審査員から資金面や事業面で実現性が貧しいと判断された場合、ほぼ採択されません。市場性や動向なども踏まえ、売上や収益の根拠を具体的に示しましょう。
対象業種の市場規模や動向を知るためにも、統計資料等の客観的な市場データを活用することで、事業計画に説得力が生まれます。
④ 加点項目の適用
審査員が採択案件を決定するにあたり、大きく分けて、【基本の審査項目】+【加点項目】という2つの構成から評価しています。
- 審査項目・・・最低限おさえておくべきポイント
- 加点項目・・・審査項目とは別に、要件を満たすと加点を受けることができる
1点、2点で合否も分かれる可能性もあるので、基本の審査項目を満たした上で、該当する加点項目があれば必ず適用しましょう。
なお、加点項目は公募回ごとに異なります。第8回公募での、8つの加点項目をご紹介します。
加点項目 | 対象となる補助枠 |
①大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点 | 全ての補助枠(通常枠、大規模賃金引上枠、グリーン成長枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠) |
②最低賃金枠申請事業者に対する加点 | 最低賃金枠 |
③ 経済産業省が行う EBPM の取組への協力に対する加点 | 全ての補助枠(通常枠、大規模賃金引上枠、グリーン成長枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠) |
④パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点 | 大規模賃金引上枠、グリーン成長枠 |
⑤ 事業再生を行う者に対する加点 | 全ての補助枠(通常枠、大規模賃金引上枠、グリーン成長枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠) |
⑥特定事業者であり、中小企業者でない者に対する加点 | 全ての補助枠(通常枠、大規模賃金引上枠、グリーン成長枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠) |
⑦サプライチェーン加点 | 全ての補助枠(通常枠、大規模賃金引上枠、グリーン成長枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠) |
⑧足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けている事業者に対する加点 | 全ての補助枠(通常枠、大規模賃金引上枠、グリーン成長枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠) |
事業再構築補助金における事業計画書の作成
事業計画書の枚数
事業再構築補助金の事業計画書の枚数は、申請金額などによって異なります。
- 補助金額1,500万円以下…A4で計10ページ以内
- 補助金額1,500万円超…A4で計15ページ以内
- 複数の事業者が連携して事業に取り組む場合…A4で計20ページ以内
事業計画の4つの区分
事業再構築補助金の事業計画は、4つの区分から成り立っています。この4つの区分を事業計画書に盛り込む必要があります。
1.補助事業の具体的取組内容
現在の事業の状況、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性、事業再構 築の具体的内容等を記載します。
2.将来の展望
本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、市場規模等について、優位性・収益性や課題やリスクとその解決方法などを記載します。また、本事業の成果について、目標となる時期・売上規模等についても記載します。
3.事業で取得する資産
本事業により取得する主な資産(単価50万円以上の建物、機械装置・システム等)の名称、 分類、取得予定価格等を記載します。
4.資金調達計画
本事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画等について具体的に記載します。
認定支援機関と共同で策定する
事業再構築補助金では、「認定経営革新等支援機関」と相談しながら、事業計画書を策定することが必須要件となっています。
ただし、事業計画の策定・実行・計画目標の達成に責任を持つのは、申請者である事業者自身です。このため、自ら主体的に事業計画を策定することが重要です。
申請書類の不備・不足
また、事業計画書自体はしっかりと作成しているものの、申請書類の不備・不足により、不採択とせざるを得ないケースもあります。申請する書類に関しては、しっかりと確認し、ミスのないように、期間に余裕をもって申請するようにしましょう。
事業再構築補助金の必須申請要件
①2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、 コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。
※上記を満たさない場合には、次の項目を満たすことでも申請可能。2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前の同 3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること。
②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む。
③補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。
事業再構築補助金の補助額・補助率
通常枠
補助額
従業員数20人以下 :100万円~2,000万円
従業員数21~50人 :100万円~4,000万円
従業員数51人~100人 :100万円~6,000万円
従業員数101人以上 :100万円~8,000万円
補助率
中小企業2/3(6,000万円超は1/2)
中堅企業1/2(4,000万円超は1/3)
大規模賃金引上枠
必須要件①~③を満たし、
- 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
- 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5年の事 業計画期間終了までの間、従業員数を年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増員させること
補助額
従業員数101人以上:8,000万円~1億円
補助率
中小企業2/3 (6,000万円超は1/2)
中堅企業1/2 (4,000万円超は1/3)
回復・再生応援枠
必須要件①~③を満たし、かつ以下の(1)または(2)のどちらかを満たすこと
(1)2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少していること
(2)中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受け再生計画等を策定していること
補助額
従業員数5人以下 :100万円~500万円
従業員数6~20人 :100万円~1,000万円
従業員数21人以上 :100万円~1,500万円
補助率
中小企業3/4
中堅企業2/3
最低賃金枠
必須要件①~③を満たし、かつ2021年10月から2022年8月までの間で、3月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること
補助額
従業員数5人以下 :100万円~500万円
従業員数6~20人 :100万円~1,000万円
従業員数21人以上 :100万円~1,500万円
補助率
中小企業3/4
中堅企業2/3
グリーン成長枠
以下の要件を全て満たすこと(売上高の減少は求めない)
①事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む
②補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加又は従業員一人当たり付加価値額の 年率平均5.0%以上増加の達成
③グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、 その取組に関連する2年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行う。
補助額
中小企業:100万円~1億円
中堅企業:100万円~1.5億円
補助率
中小企業1/2
中堅企業1/3
緊急対策枠
必須要件②~③を満たし、
足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けたことにより、2022年1月以降の連続 する6か月のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の 合計売上高と比較して10%以上減少していること等、また、コロナによって影響を受けていること。 売上高の減少に代えて、付加価値額の減少でも可。
補助額
従業員数5人以下 :100万円~1,000万円
従業員数6~20人 :100万円~2,000万円
従業員数21人~50人 :100万円~3,000万円
従業員数51人以上 :100万円~4,000万円
補助率
中小企業3/4(※1)
中堅企業2/3(※2)
(※1)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の 場合1,500万円を超える部分は2/3
(※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の 場合1,500万円を超える部分は1/2
事業再構築補助金の採択事例
事業再構築補助金の公式HPに公開されている採択された事業計画の取組みをご紹介します。
類型 | 業種 | 事業計画名 | 事業計画の概要 |
新分野展開 | 宿泊業 | ワーケーション滞在向けのコワーキング機能付宿泊施設の開業 | 首都圏企業等によるワーケーション滞在の新規獲得に特化したコワーキング機能付宿泊施設を開業し、法人との定額利用計画の獲得を目指す方法で新分野展開を行う。 |
業態転換 | その他生活関連
サービス業 |
食・イベント分野のDX推進により総合プロデュース企業へ転換 | 既存事業の食とイベント分野をIT・IOT導入により高生産性事業に再構築し、次世代型イベントのデファクトスタンダードをつくる。 |
業態転換 | 映像・音声
文字情報制作業 |
画期的な画像提供システム構築による新たな広報支援事業 | ドローン及び屋内外用VRカメラを活用した画期的な画像提供システムの構築を行う。非対面・非接触化等に寄与する新たな広報支援ツールの提供を行う。 |
事業転換 | 宿泊業 | 民泊から旅館業への転換による、ビジネス・ファミリー層向けた新規プランの開設 | 地域密着の強みを生かした中期滞在プランと、新型コロナウイルス対応の強化により短期個室プランを経営の柱とする。 |
事業転換 | 飲食料品卸業 | 地域資源を活用した総菜製造のためのセントラルキッチン新設と食品製造卸売への事業転換 | 新たに調理加工設備を新設して地元素材を使用した冷凍調理食品の製造から卸販売及び通信販売を行う。 |
新分野展開 | その他の
事業サービス業 |
脱炭素社会を支える風力発電設備の運用管理・保守・技術者養成事業 | 設備の運搬・建設工事の実績を活かし、運用管理・保守・技術者養成サービスの提供を行う。 |
事業再編
新分野展開 |
飲料・たばこ
飼料製造業 |
『業界初』死滅後も効果のある特許乳酸菌を使った健康志向飲料の開発と製造販売 | 完全無添加商品を小容量アルミ缶初充填ラインによる製造、健康志向者へSNS・HPを用いたマーケティングを行う。 |
新分野展開 | 宿泊業
飲食サービス業 |
飲食店で培ったおもてなしの心とノウハウ活かす高齢者配食事業へ新展開 | 飲食店経営から、高齢者配食事業へ。今後拡大が予測される高齢者配食市場へ参入しV字回復を目指す。 |
業種転換 | 学術研究、専門・
技術サービス業 |
オンラインで完結する事業承継およびM&Aプラットフォーム事業 | 事業承継問題を解決するM&Aプラットフォーム事業。M&AのプロセスをDXし、M&Aのコストを最小限にすることにより、誰でも事業承継、M&Aが可能なサービスを提供する。 |
業態転換 | 宿泊業
飲食サービス業 |
BBQ業態転換「商品個包装パッケージ化に伴う受発注および在庫管理システムのIT化事業」 | 従来のセントラルキッチンで製造した料理を「ケータリング」で店舗へ運ぶビジネスモデルから、全て小分した個包装で製造した「物販商品」への新たなビジネスモデルへの転換を行う。 |
まとめ
事業再構築補助金の採択されやすくなるポイントなどをご紹介させていただきました。採択される事業計画書を策定するには、しっかりとポイントを押さえたうえで、具体的かつ有効な取り組みを記載する必要があります。事業再構築補助金を検討されている事業者様は、スケジュール管理等もしっかり行い、万全の状態で申請しましょう。自社で準備するのが難しい場合は、補助金の申請サポートを利用することをおすすめします。