2022/11/11
2024/05/31
事業再構築補助金の採択事例と採択されやすくなるポイントを解説
事業再構築補助金とは、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するための、企業の思い切った事業再構築を支援してくれる補助金です。
大規模な補助金制度であり、現在第12回公募が開始されています。
当記事では、これから応募する方や再応募を検討している方へ、採択されやすくなるためのポイントを解説していきたいと思います。
・補助金の申請をしたいけれど、手続きや対象になるのかわからない
・そもそも事業再構築補助金が受けられるか相談したい
・事業再構築補助金以外にも申請できる補助金があるか知りたい
そんなお悩みをお持ちの方は一度NS&パートナーズ会計事務所へご相談ください!
目次
事業再構築補助金に採択されやすくするためのポイント
事業再構築補助金は、申請をすれば必ずしも全事業者が採択されるわけではありません。
事業再構築補助金の審査は加点式となっており、合格基準を超えた事業者だけが採択されます。
より高い点を取り、採択されやすくするためにはどうしたら良いか、ポイントをご紹介していきます。
採択ポイント1:事業再構築補助金の目的を理解する
まずは、事業再構築補助金の「目的・趣旨」をしっかりと理解することが重要です。
補助金によって、目的・対象・仕組みが異なります。
計画している事業が事業再構築補助金の目的から外れていたり、記載漏れがあっては不採択となってしまいます。
大切なのは「補助金のための計画」ではなく「事業再構築補助金の目的に沿った計画」を策定することです。
公募要領には、対象者やスケジュール、審査項目など、申請に必要な情報がすべて記載されています。
まずは、公募要領をしっかりと読み込み、理解することが重要です。
公募要領は文字ばかりなので、読むのに苦労する、、、という方には動画がおすすめです。
採択ポイント2:誰が見てもわかる事業計画書
審査員は多くの事業計画書に目を通すため、審査時間が限られています。
また、すべての業界や業種について細かく知識を持っているわけではありません。
業界でのみ使われている専門用語を補足説明なしで、ずらずらと書かれていても、理解できない可能性が非常に高いです。
事業計画書を書く際は、内容根拠を示すデータや表を用意し、専門用語はなるべく使わず、誰が見てもわかりやすい事業計画書を作成するよう心掛けましょう。
採択ポイント3:実現性の高い事業計画を作成する
事業を実行できる技術やノウハウなどの記載が無く、審査員から資金面や事業面で実現性が貧しいと判断された場合、ほぼ採択されません。
市場性や動向なども踏まえ、売上や収益の根拠を具体的に示しましょう。
対象業種の市場規模や動向を知るためにも、統計資料等の客観的な市場データを活用することで、事業計画に説得力が生まれます。
採択ポイント4:加点項目の適用
審査員が採択案件を決定するにあたり、大きく分けて、【基本の審査項目】+【加点項目】という2つの構成から評価しています。
- 審査項目・・・最低限おさえておくべきポイント
- 加点項目・・・審査項目とは別に、要件を満たすと加点を受けることができる
1点、2点で合否も分かれる可能性もあるので、基本の審査項目を満たした上で、該当する加点項目があれば必ず適用しましょう。
なお、加点項目は公募回ごとに異なります。必ず最新の公募要領を確認しましょう。
事業再構築補助金における事業計画書の作成
作成ポイント1.事業計画書の枚数
事業再構築補助金の事業計画書の枚数は、申請金額によって異なります。
- 補助金額1,500万円以下…A4で計10ページ以内
- 補助金額1,500万円超……A4で計15ページ以内
作成ポイント2.事業計画の4つの区分を盛り込む
事業再構築補助金の事業計画は、4つの区分から成り立っています。この4つの区分を事業計画書に盛り込む必要があります。
①補助事業の具体的取組内容
1ページ目に、既存製品と新製品、既存市場(顧客)と新市場(顧客)、既存事業と新事業などについて、これまでのものとこれからのものが、それぞれ何が異なるのかを具体的に記載します。
2ページ目以降に、現在の事業の状況、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性、事業再構築の具体的内容等を記載します。
②将来の展望
本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、市場規模等について、優位性・収益性や課題やリスクとその解決方法などを記載します。また、本事業の成果について、目標となる時期・売上規模等についても記載します。
③本事業で取得する主な資産
本事業により取得する主な資産(単価50万円以上の建物、機械装置・システム等)の名称、 分類、取得予定価格等を記載します。
④収益計画
本事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画、「付加価値額」や「給与総支給額」の算出根拠等について具体的に記載します。
作成ポイント3.認定支援機関と共同で策定する
事業再構築補助金では、「認定経営革新等支援機関」と相談しながら、事業計画書を策定することが必須要件となっています。
ただし、事業計画の策定・実行・計画目標の達成に責任を持つのは、申請者である事業者自身です。このため、自ら主体的に事業計画を策定することが重要です。
作成ポイント4.申請書類の不備・不足がないよう余裕を持った申請を
事業計画書自体はしっかりと作成しているものの、申請書類の不備・不足により、不採択とせざるを得ないケースもあります。
申請する書類に関しては、しっかりと確認し、ミスのないように、期間に余裕をもって申請するようにしましょう。
事業再構築補助金の補助額、補助率
従業員規模に応じ、補助上限額が設定されています。
成長分野進出枠(通常類型)
項目 | 要件 |
概要 | ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援 |
補助金額 | 【従業員数 20人以下】 100万円 ~ 1,500万円(2,000万円)
【従業員数 21~50人】 100万円 ~ 3,000万円(4,000万円) 【従業員数 51~100人】 100万円 ~ 4,000万円(5,000万円) 【従業員数 101人以上】 100万円 ~ 6,000万円(7,000万円) |
補助率 | 中小企業者等 1/2 (2/3)
中堅企業等 1/3 (1/2) |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~12か月以内
(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から14か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、 広告宣伝・販売促進費、研修費、廃業費(市場縮小要件を満たして申請する場合のみ) |
※()内は短期で大規模な賃上げを行う場合:事業終了時点で①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること
※廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ
成長分野進出枠(GX進出類型)
項目 | 要件 |
概要 | ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援 |
補助金額 | 中小企業者等
【従業員数 20人以下】 100万円 ~ 3,000万円(4,000万円) 【従業員数 21~50人】 100万円 ~ 5,000万円(6,000万円) 【従業員数 51~100人】 100万円 ~ 7,000万円(8,000万円) 【従業員数 51~100人】 100万円 ~ 8,000万円 (1億円) 中堅企業者等 100万円 ~ 1 億円(1.5億円) |
補助率 | 中小企業者等 1/2 (2/3)
中堅企業等 1/3 (1/2) |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~14か月以内
(ただし、補助金交付候補者の採択発表日からか16月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、 広告宣伝・販売促進費、研修費 |
※()内は短期で大規模な賃上げを行う場合:事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成すること
コロナ回復加速化枠(通常類型)
項目 | 要件 |
概要 | 今なおコロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援 |
補助金額 | 【従業員数 5人以下】 100万円 ~ 1,000円
【従業員数 6~20人】 100万円 ~ 1,500万円 【従業員数 21~50人】 100万円 ~ 2,000万円 【従業員数 51人以上】 100万円 ~ 3,000万円 |
補助率 | 中小企業者等 2/3
中堅企業等 1/2 |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~12 か月以内(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から 14 か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、 広告宣伝・販売促進費、研修費 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
項目 | 要件 |
概要 | コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援 |
補助金額 | 【従業員数 5人以下】100万円~500万円
【従業員数 6~20 人】100万円~1,000万円 【従業員数 21人以上】100万円~1,500万円 |
補助率 | 中小企業者等 3/4(2/3)
中堅企業等 2/3(1/2) |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~12 か月以内
(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から14 か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門 家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、 広告宣伝・販売促進費、研修費 |
※補助率()内はコロナ借換要件を満たさない場合
サプライチェーン強靭化枠
項目 | 要件 |
概要 | ポストコロナの経済社会において、海外で製造等する製品の国内回帰や地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品の生産により、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う中小企業等に対する支援 |
補助金額 | 1,000 万円 ~ 5億円以内
※建物費がない場合は3億円以内 |
補助率 | 中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3 |
補助事業
実施期間 |
交付決定日~28か月以内
(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から30か月後の日まで) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費 |
事業再構築補助金の補助対象経費
事業再構築補助金の対象経費は以下のとおりです。
対象経費 | 内容 |
建物費 | 建物の建設・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復等
※新築に関しては、補助事業の実施に必要不可欠であること、代替手段が存在しない場合に限り認められ、「新築の必要性に関する説明書」を提出する必要があります。 |
機械装置・
システム構築費 |
機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、専用ソフトウェア・情報システム等の購入 |
技術導入費 | 本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費 |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
※応募申請時の事業計画の作成に要する経費は補助対象外。 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 |
外注費 | 本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
広告宣伝・販売促進費 | 本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費 |
研修費 | 本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費 |
廃業費 | 廃業手続費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用 |
事業再構築補助金の全枠共通の必須要件
① 事業計画について認定支援機関の確認を受けること
事業再構築補助金では、事業計画書を認定経営革新等支援機関と共同で策定し、確認を受けることが必要です。
認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)のことです。
② 付加価値額を向上させること
事業再構築補助金では、以下のどちらかを満たす事業計画書を策定する必要があります。
- 補助事業終了後3~5年で、付加価値額を年率平均3.0%以上増加させる
- 従業員一人当たり付加価値額を、年率平均3.0%以上増加させる
付加価値額とは、「営業利益」「人件費」「減価償却費」を足したものです。
※その他、申請枠により、追加の必須要件があります。
事業再構築補助金の採択事例
事業再構築補助金の公式HPに公開されている採択された事業計画の取組みをご紹介します。
類型 | 業種 | 事業計画名 | 事業計画の概要 |
新分野展開 | 宿泊業 | ワーケーション滞在向けのコワーキング機能付宿泊施設の開業 | 首都圏企業等によるワーケーション滞在の新規獲得に特化したコワーキング機能付宿泊施設を開業し、法人との定額利用計画の獲得を目指す方法で新分野展開を行う。 |
業態転換 | その他生活関連
サービス業 |
食・イベント分野のDX推進により総合プロデュース企業へ転換 | 既存事業の食とイベント分野をIT・IOT導入により高生産性事業に再構築し、次世代型イベントのデファクトスタンダードをつくる。 |
業態転換 | 映像・音声
文字情報制作業 |
画期的な画像提供システム構築による新たな広報支援事業 | ドローン及び屋内外用VRカメラを活用した画期的な画像提供システムの構築を行う。非対面・非接触化等に寄与する新たな広報支援ツールの提供を行う。 |
事業転換 | 宿泊業 | 民泊から旅館業への転換による、ビジネス・ファミリー層向けた新規プランの開設 | 地域密着の強みを生かした中期滞在プランと、新型コロナウイルス対応の強化により短期個室プランを経営の柱とする。 |
事業転換 | 飲食料品卸業 | 地域資源を活用した総菜製造のためのセントラルキッチン新設と食品製造卸売への事業転換 | 新たに調理加工設備を新設して地元素材を使用した冷凍調理食品の製造から卸販売及び通信販売を行う。 |
新分野展開 | その他の
事業サービス業 |
脱炭素社会を支える風力発電設備の運用管理・保守・技術者養成事業 | 設備の運搬・建設工事の実績を活かし、運用管理・保守・技術者養成サービスの提供を行う。 |
事業再編
新分野展開 |
飲料・たばこ
飼料製造業 |
『業界初』死滅後も効果のある特許乳酸菌を使った健康志向飲料の開発と製造販売 | 完全無添加商品を小容量アルミ缶初充填ラインによる製造、健康志向者へSNS・HPを用いたマーケティングを行う。 |
新分野展開 | 宿泊業
飲食サービス業 |
飲食店で培ったおもてなしの心とノウハウ活かす高齢者配食事業へ新展開 | 飲食店経営から、高齢者配食事業へ。今後拡大が予測される高齢者配食市場へ参入しV字回復を目指す。 |
業種転換 | 学術研究、専門・
技術サービス業 |
オンラインで完結する事業承継およびM&Aプラットフォーム事業 | 事業承継問題を解決するM&Aプラットフォーム事業。M&AのプロセスをDXし、M&Aのコストを最小限にすることにより、誰でも事業承継、M&Aが可能なサービスを提供する。 |
業態転換 | 宿泊業
飲食サービス業 |
BBQ業態転換「商品個包装パッケージ化に伴う受発注および在庫管理システムのIT化事業」 | 従来のセントラルキッチンで製造した料理を「ケータリング」で店舗へ運ぶビジネスモデルから、全て小分した個包装で製造した「物販商品」への新たなビジネスモデルへの転換を行う。 |
まとめ
事業再構築補助金の採択されやすくなるポイントなどをご紹介させていただきました。
採択される事業計画書を策定するには、しっかりとポイントを押さえたうえで、具体的かつ有効な取り組みを記載する必要があります。
事業再構築補助金を検討されている事業者様は、スケジュール管理等もしっかり行い、万全の状態で申請しましょう。
自社で準備するのが難しい場合は、補助金の申請サポートを利用することをおすすめします。