2021/8/11

2023/09/01

ものづくり補助金とは?対象や申請方法をわかりやすく解説

この記事の監修

NS&パートナーズ会計事務所代表税理士 鈴木良洋税理士/宅地建物取引士/経営革新等支援機関(財務局・経済産業局認定)

東京都中央区八重洲にてNS&パートナーズ会計事務所を開業。
創業・独立の支援、税務・会計・決算に関する業務、税務申告書への書面添付、
自計化システム導入支援などに従事。

 

ものづくり補助金は、名称に「ものづくり」とあることから、製造業だけが対象?を思われがちですが、そうではありません。幅広い業種が対象となり、補助金額も大きいため、非常に人気の補助金となっています。

当記事では、ものづくり補助金の対象者や申請方法、注意点などをわかりやすく解説していきます。

 

ものづくり補助金とは設備投資支援等のための補助金

 

ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が取り組む、革新的なサービスや試作品開発、生産性を向上させるための設備投資等を支援する補助金です。

正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業庁、および独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する補助事業です。

 

ものづくり補助金の対象者となる3つの条件

 

その1:中小企業・小規模事業者であること

 

ものづくり補助金の対象者となるのは、中小企業・小規模事業者です。

また創業間もない会社や個人事業主の方も申請可能です。

業種によって、資本金と従業員数の上限がそれぞれ定められており、いずれかが基準以下であれば対象になります。

業種 資本金 従業員数(常勤)
製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業 5,000万円 100人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業 3億円 900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
その他の業種(上記以外) 3億円 300人

 

【中小企業者(組合関連)】

下表にある組合等に該当すること

組織形態
企業組合
協業組合
事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会
商工組合、商工組合連合会
商店街振興組合、商店街振興組合連合会
水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会
生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会
内航海運組合、内航海運組合連合会
技術研究組合(直接又は関節の構成員の3分の2以上が中小企業者であるもの)

 

大企業などは申請対象外になる

ものづくり補助金は、中小企業を対象とした補助金になりますので、大企業の傘下にあるみなし大企業は申請対象となります。

  • みなし大企業
  • 財団法人、社団法人、医療法人、学校法人など

(一定の要件を満たすNPO法人は対象となります。)

 

 

その2.補助金申請段階で既に創業していること

申請時点で事業を開始していることが条件です。

  • 法人:設立登記を行っている
  • 個人事業主:税務署に開業届を提出している

 

その3.賃金引上げ計画の表明をしていること

対象者は以下の3つの要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していることが必要になります。

 ① 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

 ② 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加

 ③ 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

 

ものづくり補助金の対象経費

 

対象となる経費

以下の経費がものづくり補助金の対象となります。

補助対象経費の種類 内容
機械装置費 補助事業に使われる機械・装置、工具・器具などの費用
システム構築費 補助事業に使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築などの費用
技術導入費 補助事業の実施に必要な知的財産権等の導入にかかる費用
専門家経費 補助事業の実施のためにコンサルティングなどの専門家に支払われる費用
運搬費 運搬費、宅配・郵送料等にかかる費用
クラウドサービス利用費 補助事業に必要となるクラウドサービスの利用にかかる費用
原材料費 補助事業の試作品開発に必要な原材料および副材料の購入費用
外注費 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)などの作業に一部を外部に委託する際の費用
知的財産権等関連経費 補助事業で必要となる特許の申請にかかわる弁理士の代行費用など

グローバル市場開拓枠のみ

海外旅費 海外事業の拡大・強化等を目的とした渡航費・宿泊費用
通訳・翻訳費

(海外市場開拓(JAPANブランド類型)のみ)

補助事業遂行に必要な通訳・翻訳費(翻訳については広告宣伝・販売促進に必要な場合のみ)
広告宣伝・販売促進費

(海外市場開拓(JAPANブランド類型)のみ)

海外事業で展開する製品・サービスに必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成や媒体掲載費用など

 

対象とならない経費

以下の経費は補助対象になりません。

  • 不動産(土地の購入費、建物の建設費、増改築工事費など)
  • 汎用性の高いもの(パソコン、タブレット端末など)
  • 従業員に支払う人件費など

 

ものづくり補助金の補助率と補助金額

ものづくり補助金では、5つの申請枠から構成されています。

補助上限額や補助率は、申請される枠、類型や従業員の人数によって異なります。

申請枠 補助金額と補助率
通常枠 【補助金額】

従業員

5人以下・・・・100万円~750万円

6人~20人・・100万円~1,000万円 

21人以上・・・100万円~1,250万円

【補助率】

補助対象経費の2分の1(小規模事業者は3分の2)

回復型賃上げ・雇用拡大枠 【補助金額】

従業員

5人以下・・・・100万円~750万円

6人~20人・・100万円~1,000万円 

21人以上・・・100万円~1,250万円

【補助率】

補助対象経費の3分の2

デジタル枠 【補助金額】

従業員

5人以下・・・・100万円~750万円

6人~20人・・100万円~1,000万円 

21人以上・・・100万円~1,250万円

【補助率】

補助対象経費の3分の2

グリーン枠 エントリー類型 【補助金額】

従業員数

5人以下・・・・100万円~750万円

6人~20人・・100万円~1,000万円 

21人以上・・・100万円~1,250万円

【補助率】

補助対象経費の3分の2

スタンダード類型 【補助金額】

従業員数

5人以下・・・・  750万円~1,000万円

6人~20人・・1,000万円~1,500万円 

21人以上・・・1,250万円~2,000万円

【補助率】

補助対象経費の3分の2

アドバンス類型 【補助金額】

従業員数

5人以下・・・・1,000万円~2,000万円

6人~20人・・1,500万円~3,000万円 

21人以上・・・2,000万円~4,000万円

【補助率】

補助対象経費の3分の2

グローバル市場開拓枠 【補助金額】

100万円~3,000万円 

【補助率】

補助対象経費の2分の1(小規模事業者は3分の2)

 

ものづくり補助金の採択事例

 

ものづくり補助金の公式ホームページでは、採択事例の一覧が公表されています。

過去に採択された事例は、以下のものがあります。

  • 最新の電気式醸造設備による地ビール製造
  • 最新機材の導入による顧客満足度の向上とヘッドスパサービスの提供
  • オフィスクリーニングのFC本部事業の開始
  • AIカメラの開発プロセスを効率化するAIカメラ開発評価ツールの制作
  • 地域の動物病院として最新設備による最高度の一次診療の提供
  • 海外向けWeb3専門メディアを通じたNFT作品販売事業
  • AI・IoTを活用したキッチンカー事業の次世代ポータルサイト
  • 製本工程のボトルネック解消による少ページ印刷物への積極的対応
  • 地域の溶接を担う新型アクティブロボット導入による自動化事業
  • 木造住宅建築業界に貢献する高品質木材製品の短納期化供給体制の構築
  • 超高圧ポンプ導入によるインフラメンテナンス事業への参入
  • 受配送業務のデジタル化によるサービス向上を実現するDX化
  • 障がい者雇用におけるダイレクトリクルーティングサービスの開始
  • リモートワークを活用した高精度食品機械部品の生産システム開発
  • 電気自動車等の精密化・重量増加に対応する整備環境への設備投資
  • 最新重機導入と人材投資で災害復旧、除雪の対応力強化に挑む
  • 下請自動車部品塗装業から脱却。農業機械DX高難度塗装業への挑戦

 

また、ものづくり補助金の申請額は、1,000万円以上が採択率63.1%と、最も高い数値となっています。

引用:ものづくり補助金公式ホームページ

 

ものづくり補助金の申請における注意点

 

補助金は後払い

ものづくり補助金は、前払いで受給できるという誤解をされる方も多いですが、後払い制になります。

補助事業はまず借入などを含む自己資金で実施する必要があります。

最終的に補助金は受給されますが、一時的に高額を負担することになります。

補助金が下りるまでに時間がかかるため、資金繰りに注意しましょう。

 

補助金採択率は50%~60%

ものづくり補助金は、補助金の予算枠が決められているため申請をすれば必ず通るというものではありません。

近年の採択率は5~6割程度とされており、申請をした企業の半数は不採択となっています。

以前よりも採択率は高い傾向にありますが、いまだに狭き門となっているのが現状です。

締切回 応募者数 採択者数 採択率
7次 5,507 2,768 50.2%
8次 4,653 2,780 59.7%
9次 3,613 2,247 62.1%
10次 4,294 2,612 60.8%
11次 4,668 2,786 59.4%
12次 3,256 1,907 58.6%
13次 3,322 1,927 58.0%
14次 4,865 2,470 50.7%

 

補助事業期間は交付決定から最大10ヶ月

補助金が採択されると、補助事業実施期間が決定されます。

補助事業実施期間は、交付決定から最大10カ月間です。

補助対象となるのは、この最大10カ月間の間の支出された経費のみが対象となります。

補助事業期間の前後の支出については、補助金対象にはなりませんので注意しましょう。

 

採択された後にも実績報告などの手続が必要

ものづくり補助金は、採択を受けたらそれで終わりではありません。

採択後、交付申請手続きを行い、定められた補助事業期間に経費を立て替え払いしながら事業を実施します。

その後、中間監査や実績報告の手続きを経て、ようやく補助金が振り込まれます。

採択を受けてから補助金が下りるまでは時間を要するため、資金繰りには注意が必要です。

また、補助金を受けてから5年間は、補助を受けた事業の成果報告書を提出する義務があります。

 

採択された後の手続きについて興味がある方は、下記の記事を参考にしてください。

ものづくり補助金の採択後の手続きとは?

 

【まとめ】ものづくり補助金とは?

ものづくり補助金は、税金を使用した国の補助金であるため、申請の準備から受給まで多くの段階を踏んでいかなければなりません。

事業計画の策定では、確実に審査項目を押さえた計画書の作成が必要になります。

ですが、補助金額も大きいため、大変人気がある補助金制度です。

活用すれば自己負担を軽減しながら、事業を拡大するチャンスになります。興味がある方は、ぜひ挑戦してみてください。

NS&パートナーズでは、補助金の申請サポートも行っております。ぜひお気軽にご相談ください。

 

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