2021/8/11

2023/01/13

ものづくり補助金とは?対象や申請方法をわかりやすく解説

この記事の監修

NS&パートナーズ会計事務所代表税理士 鈴木良洋税理士/宅地建物取引士/経営革新等支援機関(財務局・経済産業局認定)

東京都中央区八重洲にてNS&パートナーズ会計事務所を開業。
創業・独立の支援、税務・会計・決算に関する業務、税務申告書への書面添付、
自計化システム導入支援などに従事。

 

ものづくり補助金は、名称に「ものづくり」とあることから、製造業だけが対象?を思われがちですが、そうではありません。幅広い業種が対象となり、補助金額も大きいため、非常に人気の補助金となっています。

当記事では、ものづくり補助金の対象者や申請方法、注意点などをわかりやすく解説していきます。

 

ものづくり補助金とは?

 

のづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が取り組む、革新的なサービスや試作品開発、生産性を向上させるための設備投資等を支援する補助金です。

正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業庁、および独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する補助事業です。

 

ものづくり補助金の対象者となる3つの条件

 

その1.企業規模

ものづくり補助金の対象者となるのは、中小企業・小規模事業者です。また創業間もない会社や個人事業主の方も申請可能です。

業種によって、資本金と従業員数の上限がそれぞれ定められており、いずれかが基準以下であればものづくり補助金の対象になります。

業種 資本金 従業員数(常勤)
製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業 5,000万円 100人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業 3億円 900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
その他の業種(上記以外) 3億円 300人

 

 申請対象外

  • みなし大企業
  • 財団法人、社団法人、医療法人、学校法人など

(一定の要件を満たすNPO法人は対象となります。)

 

 

その2.すでに創業している

申請時点で事業を開始していることが条件です。

法人:設立登記を行っている

個人事業主:税務署に開業届を提出している

 

 

その3.賃金引上げ計画の表明をしていること

対象者が、以下の3つの要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していることが必要になります。

 ①事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

 ②給与支給総額を年率平均1.5%以上増加

 ③事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

 

 

ものづくり補助金の5つの申請枠

 

ものづくり補助金では、5つの申請枠から構成されています。

補助上限額や補助率は、申請される枠、類型や従業員の人数によって異なります。

 

通常枠

項目 要件
概要 革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額

(従業員数)

5人以下・・・・100万円~750万円

6人~20人・・100万円~1,000万円 

21人以上・・・100万円~1,250万円

補助率 補助対象経費の2分の1(小規模事業者は3分の2)

 

 

回復型賃上げ・雇用拡大枠

項目 要件
概要 業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者が行う、革新的 な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額

(従業員数)

5人以下・・・・100万円~750万円

6人~20人・・100万円~1,000万円 

21人以上・・・100万円~1,250万円

補助率 補助対象経費の3分の2

 

 デジタル枠

項目 要件
概要 DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発又はデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による 生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援
補助金額

(従業員数)

5人以下・・・・100万円~750万円

6人~20人・・100万円~1,000万円 

21人以上・・・100万円~1,250万円

補助率 補助対象経費の3分の2

 

グリーン枠

項目 要件

概要

温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供 方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援 
補助金額

(従業員数)

【エントリー類型】

5人以下・・・・100万円~750万円

6人~20人・・100万円~1,000万円 

21人以上・・・100万円~1,250万円

【スタンダード類型】

5人以下・・・・  750万円~1,000万円

6人~20人・・1,000万円~1,500万円 

21人以上・・・1,250万円~2,000万円

【アドバンス類型】

5人以下・・・・1,000万円~2,000万円

6人~20人・・1,500万円~3,000万円 

21人以上・・・2,000万円~4,000万円

補助率 補助対象経費の3分の2

 

 

グローバル市場開拓枠

項目 要件
概要 海外事業の拡大・強化等を目的とした「製品・サービス開発」又は「生産プロ セス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援(①海外直接投資類型、②海外市場開拓(JAPAN ブランド)類型、③インバウンド市場開拓類型、④海外事業者との共同事業類型のいずれかに合致するもの)
補助金額 100万円~3,000万円 
補助率 補助対象経費の2分の1(小規模事業者は3分の2)

 

 

ものづくり補助金の対象経費

 

ものづくり補助金の対象となる経費は以下のとおりです。設備投資を促す補助金になりますので、単価50万円(税抜)以上の設備投資が必要です。

 

対象となる経費

  • 機械装置費
  • システム構築費
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス費
  • 原材料費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 海外旅費(グローバル市場開拓枠のみ)
  • 通訳・翻訳費(グローバル市場開拓枠のみ)
  • 広告宣伝費・販売販促費(グローバル市場開拓枠のみ)

 

対象とならない経費

  • 不動産(土地の購入費、建物の建設費、増改築工事費など)
  • 汎用性の高いもの(パソコン、タブレット端末など)
  • 従業員に支払う人件費など

 

ものづくり補助金の最新スケジュール

 

14次締切回のスケジュールは以下の通りです。

公募開始:令和5年1月11日(水) 17時~ 

申請受付:令和5年3月24日(金) 17時~ 

応募締切:令和5年4月19日(水) 17時

 

 

ものづくり補助金の公募要領の入手方法

 

ものづくり補助金総合サイト内の公募要領ページより、公募要領のPDFを入手することができます。

公募要領には、対象者やスケジュール、審査項目など、申請に必要な情報がすべて記載されています。申請を検討している事業者は公募要領をしっかりと読み込み、理解することが必要です。

 

▸ものづくり補助金総合サイト

 

 

ものづくり補助金申請の必要書類

 

必須の提出書類

①事業計画書 下記の内容を計10ページ以内にまとめます。

その1:補助事業の具体的取組内容

その2:将来の展望

その3:事業計画における付加価値額等の算出根拠

②補助経費に関する

誓約書

【様式1】を用いて作成し、電子ファイルを電子申請システムの 所定の場所に添付します。
③賃金引上げ計画の表明書 申請時点の直近月の事業場内最低賃金及び直近決算における給与支給総額が明記され、これを引き上げる旨の誓約を提出します。
④決算書等 直近2年の貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、販売管理明細書、個別注記表を提出します。

・個人事業主の場合は2期分の確定申告書等を添付します。

・設立2年に満たない場合は1期分の決算書を添付します。

・決算を迎えていない場合には、今後の収益見込みを反映した事業計画書と収支予算書を添付します。

⑤従業員数の確認資料 法人と個人で必要な提出書類が異なります。

法人:法人事業概況説明書の写し

個人事業主:所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写し

⑥労働者名簿 下記の2点に当てはまる場合には、労働者名簿も用意する必要があります。

・応募申請時の従業員数が21名以上である

・「従業員数の確認資料」における期末の従業員数が20名以下の場合

※その他、申請する枠によって追加で提出する資料があります。

 

任意提出書類(加点項目)

提出すれば、加点を受けることができる任意の提出書類になります。

名称 内容
【成長性加点】

経営革新計画承認書等

各都道府県知事の承認を要するため、取得までに時間がかかるため、余裕を持った申請が必要です。また、応募締切日時点で認定を受けた計画期間が終了していない場合のみ加点対象となります。
【災害加点】

事業継続力強化計画認定書等

経営革新計画承認書等に比べて取得が簡単です。また、応募締切日時点で認定を受けた計画期間が終了していない場合のみ加点対象となります。 
【政策加点】

開業届または

履歴事項全部証明書

法人の場合:履歴事項全部証明書

個人事業主の場合:開業届

【賃上げ加点】

特定適用事業所該当通知書

年金事務所から通知を受けている事業者が対象となります。

ものづくり補助金の必要書類について、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事▸ものづくり補助金必要書類とは?

 

 

ものづくり補助金の事前準備と申請方法

 

ものづくり補助金の申請は完全電子申請となっています。

電子申請をするには、GビズIDというアカウントの取得が必要となります。

GビズIDとは、法人や個人事業主向けの認証システムのことです。 GビズIDを取得すると、全ての行政サービスにログインすることができるようになります。

申請から発行までに3週間程度かかりますので、ものづくり補助金の申請をお考えであればまずは、GビズIDアカウントの取得申請を行いましょう。

GビズIDアカウントの取得が済み、ものづくり補助金の必要書類が揃ったら、ものづくり補助金総合サイトの「電子申請システムのページへ」からシステムにログインします。応募者の概要や事業内容など必要事項の入力・書類を添付して申請します。

電子申請の手順を説明した資料はこちら▶電子申請システム操作マニュアル

 

ものづくり補助金の申請手続きと流れ

 

STEP1.事前準備

電子申請に必要なGビズIDアカウントの発行手続き等を行います。

 

STEP2.公募開始

公募要領は締切分ごとに内容が変わることがあります。申請する回の公募要領に沿った内容の事業計画の策定及び必要書類の準備が必要です。

 

STEP3.申請受付

申請期間内に必要書類をまとめて、電子申請します。

 

STEP4.採択通知

約2ヵ月で採択結果が公表されます。採択者にはメールで採択の通知があります。

 

STEP5.交付申請・交付決定

事業計画に必要な経費の見積書などを準備して事務局の確認を得ます。交付申請の結果、交付決定を受けるまでは設備の発注などはできません。

 

STEP6.補助事業実施

補助事業実施期間の10ヵ月以内に、事業計画に記載した設備等の発注・契約・支払いを行い、補助事業を完了します。全ての補助事業を10ヵ月以内に終わらせる必要があります。

 

STEP7.中間監査・実績報告

中間検査を経て補助事業終了後、事務局へ実績報告書を提出します。補助金額は最終的に補助事業実施期間に支払った費用により確定します。

 

STEP8.確定検査(交付額の決定)

実績報告書の提出後、確定検査により補助事業実施期間の取組みや成果の説明を行います。

 

STEP9.補助金請求、支払い

実績報告及び確定検査に問題がなければ、補助金額が確定します。ここまできて補助金の請求、支払いを受けることができます。設備購入に借入が必要な場合は事前に金融機関への相談が必要となります。

 

STEP10.事業化状況報告

補助事業完了後5年間は、毎年事業の状況を報告する必要があります。

 

 ものづくり補助金の申請における注意点

 

補助金は後払い

ものづくり補助金は、前払いで受給できるという誤解をされる方も多いですが、後払い制になります。補助事業はまず借入などを含む自己資金で実施する必要があります。最終的に補助金は受給されますが、一時的に高額を負担することになります。補助金が下りるまでに時間がかかるため、資金繰りに注意しましょう。

 

申請しても採択されない場合がある

ものづくり補助金は、補助金の予算枠が決められているため、申請をすれば必ず通るというものではありません。近年の採択率は5~6割程度とされており、申請をした企業の半数は不採択となっています。以前よりも採択率は高い傾向にありますが、いまだに狭き門となっているのが現状です。

締切回 応募者数 採択者数 採択率
7次 5,507 2,768 50.3%
8次 4,653 2,780 59.7%
9次 3,613 2,247 62.2%
10次 4,294 2,612 60.8%
11次 4,668 2,786 59.7%
12次 3,256 1,907 58.6%

 

補助事業期間が決まっている

補助金が採択されると、補助事業実施期間が決定されます。補助事業実施期間は、交付決定から最大10カ月間です。補助対象となるのは、この最大10カ月間の間の支出された経費のみが対象となります。補助事業期間の前後の支出については、補助金対象にはなりませんので注意しましょう。

 

採択された後にも手続きが必要

ものづくり補助金は、採択を受けたらそれで終わりではありません。採択後、交付申請手続きを行い、定められた補助事業期間に経費を立て替え払いしながら事業を実施します。その後、中間監査や実績報告の手続きを経て、ようやく補助金が振り込まれます。採択を受けてから補助金が下りるまでは時間を要するため、資金繰りには注意が必要です。

また、補助金を受けてから5年間は、補助を受けた事業の成果報告書を提出する義務があります。

 

まとめ

ものづくり補助金は、税金を使用した国の補助金であるため、申請の準備から受給まで多くの段階を踏んでいかなければなりません。事業計画の策定では、確実に審査項目を押さえた計画書の作成が必要になります。ですが、補助金額も大きいため、大変人気がある補助金制度です。活用すれば自己負担を軽減しながら、事業を拡大するチャンスになります。興味がある方は、ぜひ挑戦してみてください。

NS&パートナーズでは、補助金の申請サポートも行っております。ぜひお気軽にご相談ください。

 

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