2021/12/9

2022/01/10

ものづくり補助金の特別枠について解説

この記事の監修

NS&パートナーズ会計事務所代表税理士 鈴木良洋税理士/宅地建物取引士/経営革新等支援機関(財務局・経済産業局認定)

東京都中央区八重洲にてNS&パートナーズ会計事務所を開業。
創業・独立の支援、税務・会計・決算に関する業務、税務申告書への書面添付、
自計化システム導入支援などに従事。

ものづくり補助金の申請区分

ものづくり補助金は中小企業・小規模事業者等が今後、相次いで直面する制度変更等に対応するため、取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援する補助金制度です。

申請における補助事業の類型は、基本的な「一般型」と、海外事業の拡大・強化等への支援を目的とした「グローバル展開型」の二種類あります。

 

新特別枠【低感染リスク型ビジネス枠】

「一般型」の申請区分には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による社会経済の変化に対応したビジネスモデルへの転換に向け前向きな投資を行う事業者に対して、「低感染リスク型ビジネス枠」という特別枠が設けられています。一定の要件を満たす場合には、補助率の引上げや事業に係わる営業経費(広告宣伝費や販売促進費等)が補助対象となるなど、通常枠の申請よりも優遇された支援を受けることが可能です。

 

低感染リスク型ビジネス枠の応募申請は、当該枠で不採択の場合、通常枠で再審査されます。ただし、再審査の結果、通常枠で採択された場合は、通常枠の補助率等が適用されます。また、低感染リスク型ビジネス枠で採択された案件において、交付申請及び確定検査等の際に低感染リスク型ビジネス枠の要件を満たしていないことが発覚した場合も、通常枠の補助率等が適用されます。

 

新特別枠における補助対象事業の要件

交付決定日から10ヶ月以内の補助事業実施期間に、発注・納入・検収・支払い等のすべての事業の手続きが完了する事業であること(原則、補助事業期間の延長はありません)。

 

補助対象となる事業者

日本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する中小企業者及び特定非営利活動法人

※それぞれ定められた要件を満たす者

 

補助金額

100万円 ~ 1,000万円

 

補助率

【通常枠】 中小企業者1/2、小規模企業者・小規模事業者2/3

【低感染リスク型ビジネス枠】 事業規模に関わらず2/3

 

 設備投資

単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要

 

対象経費

【通常枠】・機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

【新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)】

・上記に加えて、広告宣伝費・販売促進費

・補助対象経費全額が、以下のいずれかの要件に合致する投資であること。

〇 物理的な対人接触を減じることに資する革新的な製品・サービスの開発

(例:AI・IoT等の技術を活用した遠隔操作や自動制御等の機能を有する製品開発(部品開発を含む)、オンラインビジネスへの転換等)

〇 物理的な対人接触を減じる製品・システムを導入した生産プロセス・サービス提供方法の改善

(例:ロボットシステムの導入によるプロセス最善、複数の店舗や施設に遠隔でサービスを提供するオペレーションセンターの構築等)

〇 ウィズコロナ・ポストコロナに対応したビジネスモデルへの抜本的な転換に係る設備・システム投資

(キャッシュレス端末や自動精算機、空調設備、検温機器など、ビジネスモデルの転換に対して大きな寄与が見込まれない機器の購入は、原則として、補助対象経費になりません)

 

補助対象となる事業

個々の中小企業者にとって、下記のいずれかに該当する「新たな事業活動」であれば、既に他社において採用されている技術・方式を活用する場合でも原則として一般型の補助対象となります。ただし、業界毎の同業の中小企業の当該技術等の導入状況、地域制の高いものについては、同一地域における同業他社における当該技術等の導入状況を判断し、それぞれについて既に相当程度普及している技術・方式等の導入については、補助対象外となります。

 

新たな事業活動

〇新商品の開発又は生産

次のような新商品の開発・生産事例が対象となります。

・建設業者が、産業廃棄物である下水汚泥などを甘味料としても知られる植物を用いて処理し、新たに肥料を生産し販売する。

・木製品製造業者が、これまで建具の材料として利用が困難とされていた間伐材を、加工するための切削用刃物を開発。更に開発した天然の塗料で仕上げることで、防腐、防かび効果が高められ、環境と健康にやさしい建具を生産、販売をする。

・業務用の大型で強力な空気清浄機を製造していた企業が、きれいな空気に対するニーズの高まりを受けて、小型化に挑戦し、一般家庭用の小型で強力な空気清浄機を開発する。

・産業廃棄物業者が、茶がらやさとうきびかす等の植物性廃棄物を、生分解可能な容器にリサイクルする技術を開発。これらの製品は環境に負荷を与えることなく、廃棄処理ができる。

 

〇新役務の開発又は提供

次のような新しいサービスの開発や提供が対象となります。

・美容室が高齢者や身体の不自由な方など、自分で美容室に行くことが困難な方のために、美容設備一式を搭載した車で美容師が出張し、カットやブローの基本コースからへアメイクや着付けなどのサービスを行う。

・老舗の旅館が、空室を日帰り客向けのリラクゼーションルームとして改装し、新しいサービス事業を行う。それにより昼間の時間帯の増収を図るとともに、そこから新規宿泊客の拡大に結びつける。

・畜産農家向け飼料販売業者が、新たに畜産農家の繁忙期・旅行時に社員を畜産農家に派遣して、家畜の世話等を行うとともに、畜産農家の経営効率を向上させるためのコンサルティングサービスを行う。

 

〇商品の新たな生産又は販売方式の導入

商品が新しくなくても、生産やサービスの供給効率を向上させるなど生産方式や販売方式が新しいものであれば補助対象となります。

・果物の小売業者が、本格的なフルーツパーラーを開店。果実店で培われた果物についての知識などの強みを活かすとともに、フルーツ&ベジタブルマイスターの資格を持つ店員が常駐し、高品質フルーツを使ったスイーツや、フルーツや野菜のフレッシュジュース、健康を意識した野菜を取り入れたランチメニューも提供。

・金属加工業者が、金属熱加工製品の開発に伴う、実験データを蓄積することにより、コンピュータを利用して、熱加工による変化を予測できるシステムを構築する。それにより、実験回数を減らし、新商品開発の迅速化とコスト削減を図る。

 

〇役務の新たな提供方式の導入

次のような新しいサービス方式の採用などが対象となります。

・不動産管理会社が、企業の空家となった社員寮を一括借り上げして、それを高齢者向けに改装し、介護サービス、給食サービスを付加して、高級賃貸高齢者住宅として賃貸する。

・タクシー会社が、乗務員に介護ヘルパーや介護福祉士の資格を取得させ、病院や介護施設への送迎などのタクシー利用者を獲得し、高齢者向け移送サービスで介護サービス事業へ進出して多角化を図る。

(出展:中小企業庁発行2021年版 経営革新計画進め方ガイドブック)

 

付加価値額・賃上げ要件

・以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。

〇事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)

〇事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

〇事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加

補助事業実施期間に新型コロナウイルス感染症の影響を受けることを想定して、上記の賃上げ及び付加価値額増加の目標を据え置きし、その翌年度から3~5年の間にこの目標値を達成する計画とすることが可能です。

 

まとめ

ものづくり補助金の申請における新特別枠【低感染リスク型ビジネス枠】のメリットは以下の3点が挙げられます。

1.補助率が2/3

2.特別枠が不採択でも、通常枠での採択の可能性がある

3.付加価値向上・賃上げの達成年限を1年猶予

採択率が例年で40%程度と決して高い水準ではありませんが、設備投資に対して1/2の補助金が得られるため、新製品の開発などに取り組んでいる製造業の事業者にとっては非常に魅力的な制度と言えます。

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