2022/6/17

2023/12/22

ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方とは?

この記事の監修

NS&パートナーズ会計事務所代表税理士 鈴木良洋税理士/宅地建物取引士/経営革新等支援機関(財務局・経済産業局認定)

東京都中央区八重洲にてNS&パートナーズ会計事務所を開業。
創業・独立の支援、税務・会計・決算に関する業務、税務申告書への書面添付、
自計化システム導入支援などに従事。

 

ものづくり補助金は、申請すれば必ずしも採択されるとは限りません。

採択率を上げるためには、どんな審査項目があるのかを知り、その項目に合わせて事業内容を適切にアピールすることが重要です。

当記事では、これから応募する方や再応募を検討している方へ、採択率をUPさせるための書き方について解説していきます。

 

目次

ものづくり補助金の基本の審査ポイント

 

ものづくり補助金は、審査員が採択案件を決定するにあたり、大きく分けて【基本の審査項目】+【加点項目】という2つの構成から評価しています。

  • 審査項目・・・最低限おさえておくべきポイント
  • 加点項目・・・審査項目とは別に、要件を満たすと加点を受けることができる

ものづくり補助金(※通常枠の場合)の主な審査ポイントは次のとおりです。

補助事業としての

適格性

  • 補助事業実施期間内(交付決定日から10ヶ月以内)に、発注・納入・検収・支払等の全ての事業の手続きが完了する事業であること

以下、3~5年計画で

  • 総支給総額を年率平均1.5%以上増加させる取組みであるか
  • 付加価値額を年率平均3%以上増加させる取組みであるか
  • 事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする取組みであるか
技術面
  • 新製品・新サービスの革新的な開発となっているか
  • 課題、目標に対する達成度の考え方が明確か
  • 課題に対する解決策が明確で、優位性が見込まれるか
  • 補助事業実施のための技術的能力が備わっているか
事業化面
  • 補助事業実施のための社内外の体制や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか
  • ユーザー、マーケット及び市場規模が明確か、市場ニーズの有無の検証ができているか
  • 補助事業の成果が価格的、性能的に優位性や収益性を有し、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か
  • 補助事業として費用対効果が高いか
政策面
  • 地域の事業者等や雇用に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか
  • 差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか
  • 複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか
  • 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施等、我が国のイノベーションを牽引し得るか
  • ウィズコロナ、ポストコロナに向けた経済構造の転換、事業環境の変化に対応する投資内容であるか

※審査項目は、年度によって変更がある場合がありますので、必ず最新の公募要領をご確認ください。

 

 

ものづくり補助金の加点ポイント

続いて、審査項目とは別に、要件を満たすと加点を受けることができ審査得点をあげることができる「加点項目」をご紹介していきます。

ものづくり補助金は1点、2点で合否が分かれる可能性もあるので、該当する加点項目があれば必ず適用しましょう。

<現在時点(第16次公募)での加点項目は5種類>

1.成長性加点

2.政策加点

3.災害等加点

4.賃上げ加点等

5.ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組み加点

それぞれの加点項目について、詳細を解説していきます。

 

ーーー1.成長性加点ーーー

 

加点項目1:有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者

経営革新計画とは、チャレンジしたい事業を計画書に起こし、「経営革新計画」として、都道府県知事等の承認を得る制度です。

経営革新計画の認定を受けると、ものづくり補助金の加点だけではなく、融資を受ける場合などにも優遇措置を受けることができます。

小規模事業者や中小企業者はぜひとも認定を受けておきたい制度です。

 

 

ーーー2.政策加点ーーー

 

加点項目2ー1:創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)

創業や第二創業から5年以内の事業者は、加点を受けることができます。

法人は履歴事項全部証明書、個人事業主は開業届を提出します。

 

加点項目2-2:パートナーシップ構築宣言を行っている事業者

パートナーシップ構築宣言とは、取引先と良好な関係を築くために、企業が発注者の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みです。取引先とのパートナーシップを強化し、両社の成長と分配の好循環を目指します。

パートナーシップ構築宣言ポータルサイトで必要項目の入力と作成したパートナーシップ構築宣言の書類を登録すれば完了です。登録した日から承認されるまで約3〜4日後となっています。

 

加点項目2-3:再生事業者

再生事業者とは、中小企業再生支援協議会等から支援を受け、応募申請時において以下のいずれかに該当していることです。

  • 再生計画等を「策定中」の者
  • 再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内に再生計画等が成立等した者

上記に該当していれば、加点を受けることができます。

 

加点項目2-4:デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況

デジタル枠に申請する事業者のみが受けられる加点項目です。

デジタル技術等の活用の方向性や戦略等をHPに提示することや、DX推進指標、サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用など、全部で5段階あります。

A.経営の方向性及びデジタル技術等の活用の方向性の決定 

 a.デジタル技術が社会や自社の競争環境にどのような影響を及ぼすかについて認識、そ の内容について公表する。

 b.上記a.を踏まえた経営ビジョンやビジネスモデルを策定・公表する。

B.上記A.の経営ビジョンやビジネスモデルを実現するための戦略を公表する。  

C.上記B.の戦略を推進するための体制・組織(CIO(最高情報責任者)、CISO(最35 審査項目・加点項目高セキュリティ責任者)の配置、担当部門の配置等)を公表する。

D.「DX推進指標」自己診断フォーマットの定量指標における「人材欄」(688~ 690 行目/Ver.2.3 以降の場合はシート「IT システム構築の取組状況(定量指標)」の 11~13 行目)を全て記載 

E. 申請時点において、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を利用しているか。

サイバーセキュリティお助け隊とは、相談窓口、システムの異常の監視、緊急時の対応支援、簡易サイバー保険など中小企業のサイバーセキュリティ対策に不可欠な各種サービスを安価で提供してくれるサービスです。

サプライチェーンを狙うサイバー攻撃の高まりにより、中小企業のサイバーセキュリティ対策強化が求められています。

 

 

加点項目2-5:令和4年度に健康経営優良法人に認定された事業者

健康経営優良法人とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、とくに優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を表彰する制度です。

こちらは過去に認定されている必要がありますので、加点を受けるために新規で取得することはできません。

 

加点項目2-6:技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者

技術情報管理認証制度とは、国が政策した基準に基づき、重要な情報を適切に管理できている企業を認証する制度です。認証を取得している事業者は加点対象となります。

 

加点項目2-7: J-Startup、J-Startup 地域版に認定された事業者 

J-Startupとは、グローバルに活躍するスタートアップ企業のサポートをメインとしています。経済産業省によって2018年6月に立ち上げられました。実績あるベンチャーキャピタリストや大企業の新事業担当者等の外部有識者からの推薦に基づき、潜在力のある企業を選定し、政府機関と民間の「J-Startup Supporters」が集中支援を行うプログラムです。

 

加点項目2-8:「新規輸出 1 万者支援プログラム」に登録した事業者(グローバル市場開拓枠のう ち、②海外市場開拓(JAPANブランド)類型のみ)

こちらは、グローバル市場開拓枠に申請する事業者のみが受けられる加点項目です。

新規輸出1万者支援プログラムという経済産業省の施策へ登録している場合、加点対象となります。

 

加点項目2-9:取引先の事業者がグリーンに係るパートナーシップ構築宣言をしている事業者(グリ ーン枠のみ)

こちらは、グリーン枠に申請する事業者のみが受けられる加点項目です。

取引先もグリーンに関わるパートナーシップ構築宣言を行っていれば、加点対象となります。

 

 

ーーー3.災害加点ーーー

 

加点項目3:有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者

 事業継続力強化計画とは、中小企業・小規模事業者が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を、経済産業省が「事業継続力強化計画」として認定することです。

事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業・小規模事業者は、ものづくり補助金の加点以外にも税制措置や金融支援などが受けられます。

 

 

―――4.賃上げ加点等ーーー

加点項目4-1:事業計画期間における給与支給総額と事業場内最低賃金をそれぞれ以下(ア)もしくは(イ)の通りとする計画を有し、事務局に誓約書を提出している事業者に対して加点を行う

ものづくり補助金の申請要件である、給与支給総額を年率平均1.5%の増加、地域別最低賃金+30円にするだけでなく、さらに賃上げを計画する事業者は加点対象となります。

 

加点項目4-2:被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

「被用者保険の任意適用」とは、従業員51名〜500名以下の企業において、短時間労働者に対して、厚生年金保険・健康保険を適用するというものです。

加点を受ける場合は特定適用事業所該当通知書を添付することで加点が受けられます。

 

加点項目5:ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組み加点

子育て支援・女性活躍推進企業に対して、加点が受けられるようになりました。

詳細は下記のとおりです。

5ー1:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく「えるぼし認定」を受けている事業者、もしくは従業員100 人以下の事業者で「女性の活躍推進 企業データベース」に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している事業者

※厚生労働省女性の活躍推進企業データベース

 

5ー2:次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「くるみん認定」を受けている事業者、もしくは従業員100 人以下の事業者で「両立支援のひろば」に次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している事業者 

※厚生労働省両立支援のひろば」 

 

 

ものづくり補助金の減点ポイント

ものづくり補助金は減点項目があり、具体的には2つです。

  • 過去3年間に、類似の補助金の交付決定を1回受けている場合、減点対象となります

(過去3年間に、既に2回以上交付決定を受けた事業者は申請対象外)

  •  回復型賃上げ・雇用拡大枠において、繰越欠損金によって課税所得が控除されることで申請要件を満たしている場合

 

ものづくり補助金の事業計画書で採択率を上げるための書き方

 

採択ポイント1:ものづくり補助金の目的を理解すること

まずは、ものづくり補助金の「目的・趣旨」をしっかり理解することが重要です。

現在数多くの補助金がありますが、それぞれ、目的・対象・仕組みが異なります。

計画している事業がものづくり補助金の目的から外れていたり記載漏れがあっては不採択となってしまいます。

大切なのは「補助金のための計画」ではなく「ものづくり補助金の目的に沿った計画」を策定することです。

公募要領には、対象者やスケジュール、審査項目など、申請に必要な情報がすべて記載されています。

まずは、公募要領を読み込みしっかり理解してから、事業計画書の策定に取り掛かりましょう。

▶ ものづくり補助金 第16次 公募要領

 

 

採択ポイント2:誰が見てもわかる事業計画書を作成すること

合否を決めるにあたって一番重要とされているのが事業計画書です。

ですが、審査員は多くの事業計画書に目を通すため、審査時間が限られています。

また、必ずしも分野の専門的知識をもっているとは限りません。

業界でのみ使われている専門用語を補足説明なしでずらずら書かれていたり、文字だけの計画書では理解できない可能性が非常に高いです。

事業計画書を書く際は、写真や内容根拠を示すデータ・表を用意し、専門用語をなるべく使わず、誰が見ても分かりやすい事業計画書を作成するよう心掛けましょう。

 

採択ポイント3:実現性の高い事業計画を作成すること

事業を実行できる技術やノウハウなどの記載が無く、審査員から資金面や事業面で実現性が貧しいと判断された場合、ほぼ採択されません。

市場性や動向なども踏まえ、売上や収益の根拠を具体的に示しましょう。

対象業種の市場規模や動向を知るためにも、統計資料等の客観的な市場データを活用することで、事業計画に説得力が生まれます。

 

 

まとめ

ものづくり補助金は、公募要領をしっかりと読み、審査項目をきちんと理解したうえで事業計画書を作成することで、採択の可能性を上げることができます。

また、必須の審査項目を満たしたうえで、加点項目を盛り込むと審査の際に有利です。

しかし、書類の作成・準備には膨大な時間と手間を要しますので、スケジュールや申請の流れなどを十分に把握し、余裕を持った準備をしていきましょう。

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